心理的瑕疵とは?不動産の売却価格への影響の可否や告知義務も解説

心理的瑕疵とは?不動産の売却価格への影響の可否や告知義務も解説

売却する不動産に「心理的瑕疵」がある場合、売却価格に影響があることをご存じですか。
不動産を売却する予定がある方は、そもそも心理的瑕疵とは何か、どのような影響をもたらすのか、疑問に思うこともあるでしょう。
今回は、心理的瑕疵の概要と不動産の売却価格への影響、告知義務の詳細を解説します。

不動産売却前に知っておきたい心理的瑕疵とは

不動産売却前に知っておきたい心理的瑕疵とは

心理的瑕疵とは、不動産に対して買主あるいは借主が心理的抵抗を感じる不動産のことです。
そもそも瑕疵とは、不動産に生じた大きな問題や欠陥のことを指す言葉です。
基本的に瑕疵といえば外壁のヒビや雨漏り、シロアリ被害など物理的な問題を意味しますが、心理的瑕疵の場合は問題を目視できません。
ゆえに心理的瑕疵がある不動産は、問題が生じていない通常の不動産と比較すると売却が難しいとされるのです。
また、心理的瑕疵がある不動産の場合、売却する側には告知義務が課せられることを覚えておきましょう。
ここからは、どのような問題が心理的瑕疵にあたるか判断するために、具体的な例を挙げて解説します。

心理的瑕疵の事例①事故物件

心理的瑕疵がある不動産に該当するのは、いわゆる事故物件です。
たとえば過去に殺人事件が発生した不動産は、買主にとっては悪い印象につながりやすく、売却が難しくなります。
他殺ではなく自殺によって命を落とした現場も買主が嫌なイメージを抱きやすいため売却困難となり、同じく事故物件として扱われるのが基本です。
一方で、高齢の方が病気で命を落とした場合や自然死の場合は事故物件とみなされず、一般的な不動産として売却できます。
なお、孤独死など遺体の発見まで長時間を要したケースでは不動産の基礎部分までにおいなどが染み込んでいるおそれがあり、心理的瑕疵があると判断されやすいです。

心理的瑕疵の事例②周辺環境

仮に不動産自体に問題がなくても、周辺に心理的瑕疵と判断される事柄があると、その不動産は売却が困難になります。
心理的瑕疵にあたる事例としては、墓地や刑務所、火葬場など周辺住民の気持ちを害しやすい施設が近くにあるケースが該当します。
近隣に指定暴力団の事務所がある、あるいは反社会的組織の構成員が住んでいる場所も同様、心理的瑕疵がある不動産の対象です。

心理的瑕疵の事例③インターネットでの悪評

内容次第ではありますが、売却予定の不動産に対する悪い評判がインターネット上で飛び交っていると、心理的瑕疵がある不動産として扱われることがあります。
仮に悪評が広まっていることを知らずに不動産を購入した場合、引っ越したあとに近所の住民から陰口をたたかれる可能性があるためです。

心理的瑕疵がある不動産の売却価格

心理的瑕疵がある不動産の売却価格

通常、事故物件や周辺環境に問題がある物件などの心理的瑕疵がある不動産は、売却活動を開始してもなかなか売買契約に結び付きません。
買主の視点からすれば、心理的瑕疵を差し引いても購入したいと思うメリットがない限り、あえて問題がある不動産を購入したいとは思わないでしょう。
ゆえに心理的瑕疵がある不動産の売却価格は、相場を下回る金額に設定されるケースが多いのです。

心理的瑕疵が売却価格に与える影響とは

心理的瑕疵がある場合、不動産の売却価格は2~5割程度低下するといわれています。
売却価格の下がり幅は心理的瑕疵の内容で異なり、より悪い印象を与えやすい瑕疵である場合は最大の下がり幅になりやすいです。
また、下げ幅が大きい理由としては心理的瑕疵に対する印象の違いも挙げられます。
心理的瑕疵がある不動産を購入して住むことに対して不安を感じるかどうかは買主によっても違い、重い内容でも高い価格で売却できるケースがあるためです。

売却価格の下がり幅を2割で抑えられるケースとは

売却価格の下がり幅が2割で済む主なケースは、住民が孤独死や自然死を理由に死亡した場合です。
年齢を重ねて病気あるいは寿命により亡くなったケースは事件性がなく、心理的瑕疵としての度合いは小さいと判断されます。
ゆえに、不動産の査定額に与える影響が小さくなり、通常の8割程度の売却価格に設定できるのです。

売却価格の下がり幅が5割におよぶケースとは

売却価格が5割減となるおそれがあるケースは、殺人事件や自殺を理由に住民が死亡した場合です。
殺人事件や自殺が発生した場合、死因によっては遺体から血液や体液が現場に流れ、壁や床を汚す可能性があります。
殺害された方の霊が出るかもしれないとの恐怖心を抱きながら生活することを嫌がる方も多いでしょう。
また、過去に殺人事件と自殺が発生した不動産は事故物件を扱うサイトに掲載されるため、物件に対して悪い印象を抱きやすいです。
買主にとってデメリットが大きいことから、殺人事件や自殺で住民が死亡した不動産は売却価格が大きく下がりやすいのです。

心理的瑕疵がある不動産の売却に必要な「告知義務」とは

心理的瑕疵がある不動産の売却に必要な「告知義務」とは

心理的瑕疵がある不動産を売却するには告知義務が必要です。
告知義務とは、不動産の心理的瑕疵に関して、売主から買主に説明しなければならない義務のことを指します。
説明する場合は重要事項説明書に記載するほか、賃貸借契約書に盛り込むなどの方法がとられます。

告知義務が必要なケース

告知義務が生じるケースは事故物件など不自然な死による心理的瑕疵であり、病気や高齢にともなう住民の死亡は対象外です。
国土交通省が2021年に示した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」でも、自然死や不慮の事故による死亡は事故物件にあたらないとされています。
ただし、自然死だとしても発見まで長い時間がかかったケースや社会への影響が強い場合などは、例外的に告知義務が生じる可能性が高いため注意が必要です。

買主への告知はいつまで必要か

告知義務が必要な期間を考える場合、心理的瑕疵の原因が発生してからの年数で決める方法があります。
自殺であれば、発生時点から約6年経つまでは買主に告知したほうが良いでしょう。
なお、購入した事故物件を別の方に売却する(転売する)場合は告知義務がないと考えても差し支えありません。
ただし、連続殺人など凶悪な部類に該当する殺人事件の現場であるなら、売買契約の前に告知することが望ましいです。
売却前に説明を済ませれば買主とのトラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。

義務違反すると起こり得る問題

告知義務の違反が発覚すると、以下の処分が下されるおそれがあります。

●行政処分
●刑事処罰
●民事責任


行政処分は不動産会社に対するもので、1年以内の業務一部あるいは全部の停止が命じられます。
同じく刑事処罰も不動産会社が対象の処分であり、2年以下の懲役か300万円以下の罰金が科されます。
ケースに応じて、懲役刑と罰金刑の両方が科されることもあるでしょう。
民事責任は不動産の売主と不動産会社の両方を対象としており、売主は売買契約の解除や損害賠償責任を問われるおそれがあります。
不動産会社も買主から慰謝料の支払いを請求されることがあります。
告知義務違反による処分を受けないためにも、心理的瑕疵がある不動産の売却は慎重におこなう必要があるのです。

まとめ

心理的瑕疵とは、事故物件など心理的抵抗を感じる不動産を指す言葉です。
売却する不動産に心理的瑕疵がある場合、売却価格は通常の約2~5割減となります。
心理的瑕疵がある不動産の売却には告知義務がありますが、もし違反すると刑事処罰などのおそれがあるため、忘れずに買主へ告知しましょう。