不動産売却に消費税はかかる?課税・非課税のケースや注意点を解説

事務員 S

筆者 事務員 S

不動産キャリア11年

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不動産売却に消費税はかかる?課税・非課税のケースや注意点を解説

金額が大きくなると消費税も大きくなってしまうため、家や土地を売る際に不安を感じてしまうかもしれません。
しかし不動産売却の場合、非課税になるケースもあることをご存じでしょうか?
この記事では、不動産売却における消費税が課税される対象と、非課税となるケース、注意点を解説します。

個人による不動産売却における消費税が課税される対象

個人による不動産売却における消費税が課税される対象

基本的に物を売り買いする場合は消費税(以下、税)が課せられますが、個人による不動産売却に関しては、基本的に課税の対象外とされています。
とはいえ、土地や建物の売り買いには、さまざまな費用がかかるものです。
そのなかには課税対象とされているものも含まれているので、混乱しないようあらかじめ把握しておきましょう。
なおいずれの場合も、個人の売主自身が申告・納付をする必要はないので安心してください。

課税対象①仲介手数料

売却にあたって不動産会社に仲介を依頼していた場合、仲介手数料を支払う必要があります。
この仲介手数料に関しては課税対象となっているので、注意してください。
仲介手数料は、仲介した不動産の取引価格の割合で決まるので、高い値段で売るほど仲介手数料も高くなります。
仲介手数料が高くなれば、課せられる税もその分だけ増えてしまうので、負担も大きくなりがちです。
ただし、仲介手数料の割合は法律によって上限が決められています。
売却価格(税抜き価格)が200万円以下の場合は価格の5%+税が、400万円以下の場合は価格の4%+2万円+税、400万円を超えた場合は3%+6万円+税が上限です。
たとえば、取引価格が5,000万円(税抜き)の場合で、具体的な金額を考えてみましょう。
仲介手数料の上限は3%+6万円なため、最高でも156万円です。
この金額に対して税が課せられるので、このケースでの仲介手数料にかかる税額は、最大で15.6万円となります。

課税対象②一括繰り上げ返済手数料

売り出した家にローンが残っていて、売却の際に残債を一括繰り上げ返済した場合、金融機関に手数料を支払う必要があります。
この一括繰り上げ返済にかかる手数料も、課税対象です。
住宅ローンは、金融機関が提供するサービスの1種であるため、繰上返済もサービスの1種とみなされます。
ただし、ローンの特徴や種類によっては課税対象外とされるケースもあるので、心配な場合は金融機関に確認してみましょう。
一括繰り上げ返済の手数料は金融機関によって異なりますが、固定金利ローンの場合は3〜5万円、変動金利の場合は3,000〜5,000円程度が相場です。
したがって、固定金利では3,000〜5,000円が、変動金利では300〜500円程度が税として課せられる計算となります。

課税対象③司法書士報酬

不動産の取引では、抵当権抹消や所有権移転登記の手続きを代行してもらうために、司法書士に依頼するのが一般的です。
この際に支払う司法書士への報酬も、課税対象となります。
移転登記については買主側が依頼をするのが一般的ですが、抵当権抹消については売主側が依頼をして、手続きをする必要があります。
ですので税がかかるケースとしては、売却に際してローンを完済した場合が多いでしょう。
抵当権抹消にかかる司法書士報酬の相場は、5,000~2万円程度です。
したがって課せられる税額は、500~2,000円程度になるでしょう。

不動産売却で消費税が非課税となる2つのケース

不動産売却で消費税が非課税となる2つのケース

不動産売却において税が課せられる対象が限定されていた点からもわかるとおり、不動産の取引価格に対する税が非課税になるケースが存在しています。
ここからは、具体的にどのような場合に非課税になるのか、2つのケースをご紹介します。

ケース①土地を売った場合

取引価格に対する税が非課税になる1つ目のケースが、土地を売買した場合です。
たとえば、土地と建物を同時に売った場合、建物の代金に対しては税がかかってしまうのですが、土地の代金に関しては税がかかりません。
そもそも、消費税とはその名のとおり、消費に対して課せられる税金です。
建物には経年劣化の概念があるため消費物と考えられますが、土地は経年劣化が存在せず、消費物と捉えるのには無理があると考えられるため、基本的に非課税とされています。

ケース②個人が売った場合

非課税になる2つ目のケースは、課税事業者でない個人が建物を売った場合です。
そもそも消費税とは、消費者が直接納める税金ではありません。
消費対象のサービスを事業として提供している事業者が、消費者から受け取った税を納めています。
土地に関しては非課税ですが、建物には税がかかってしまいます。
ですが、個人が建物を売る場合、事業としてのサービス提供とは見なされません。
そのため、建物を売る場合であっても課税対象外となるのです。
なお不動産会社に仲介を依頼している場合でも、非課税なのは変わりません。
ただし、すでにお伝えしたとおり、仲介手数料は課税対象であるため注意してください。

不動産売却時の消費税に関する注意点

不動産売却時の消費税に関する注意点

個人が土地や建物を売る場合、一部の費用に消費税がかかるものの、基本的に売却代金は非課税となります。
一方で、法人であっても場合によっては非課税となるケースがあるほか、個人事業主の取引でも非課税となる可能性があるため、うまく活用すれば負担を軽減できるでしょう。
ここからは注意点として、上記のような少し特殊なケースについて解説します。

法人の場合は売上高次第で消費税がかからなくなる

法人は事業者であるため、消費税を納める義務がありますが、免税事業者に該当する法人に関しては納税義務が免除されるため、消費税を支払う必要がなくなります。
免税事業者とは、前々年(基準期間)の課税対象の売上高が1,000万円未満だった事業者です。
ただし、前年の開始日から6か月まで(特定期間)の売上高と給与支給額が1,000万円を超えていた場合には、前々年が1,000万円未満の売上でも課税事業者と見なされてしまうため、注意してください。
なお新しく設立された法人に関しては、前々年も前年も売上高が存在しないので、基本的には免税事業者と判断されます。

個人事業主の場合も課税事業者かどうかがポイント

個人事業主の場合、建物を売ると消費税がかかります。
なぜなら、個人事業主は個人ではあるものの、「個人の事業者」でもあるからです。
事業者であれば、個人であろうとも課税対象となります。
ですが個人事業主も法人同様、前々年の課税対象の売上高が1,000万円未満だった場合、免税事業者と見なされ納税義務が免除されます。
ただし、消費税課税事業者選択届出手続をおこない、自らの意思で課税事業者となっている場合は、前々年の売上高に関わらず免税されません。
インボイス制度に対応するために課税事業者となっている個人事業主も増えている可能性もあるため、とくに注意してください。
なお、前年の開始日から6か月までの特定期間の売上高が1,000万円を超えていた場合も、法人同様に課税事業者と見なされます。

まとめ

個人による不動産売却では、仲介手数料や一括繰り上げ返済手数料、司法書士の報酬が消費税の課税対象となります。
土地を売った場合や、事業者でない個人が建物を売った場合、その売却代金は非課税です。
注意点としては、基本的に法人や個人事業主は課税対象となるものの、前々年の売上高が1,000万円に満たず、免税事業者と見なされている場合については、非課税となる点が挙げられます。