「空き家バンク」とは?売却で利用するメリットや利用時の流れを解説

事務員 S

筆者 事務員 S

不動産キャリア12年

明るく元気がモットーです!

「空き家バンク」とは?売却で利用するメリットや利用時の流れを解説

所有している空き家を売却する方法のひとつが「空き家バンク」です。
そもそも空き家バンクとはどのようなシステムなのか、利用するメリットは何かなど、わからないことだらけの方も多いでしょう。
今回は、空き家バンクの概要と利用するメリット・デメリットとは何か、実際に利用した場合の流れを解説します。

空き家バンクとは

空き家バンクとは

空き家バンクとは、空き家を対象に売主と買主との間を取り持つシステムを指します。
具体的には、空き家を所有する方から提出された物件情報を空き家バンクのホームページ上に公開し、購入を希望する方からの問い合わせや内見予約が入り次第売主へ連絡する仕組みです。

空き家バンクが誕生した背景

空き家バンクが生まれた背景には、空き家問題が関係しています。
総務省統計局がまとめた「令和5年住宅・土地統計調査住宅通概数集計(速報集計)結果」によると、国内に存在する空き家の数は1978年から右肩上がりで増加中です。
空き家は、長年放置されると劣化が進み、犯罪拠点のリスクや安全性の問題、環境汚染などにつながるおそれがあります。
全国的な空き家問題の解決に向けて政府は2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、対策強化を図りました。
空き家バンクの誕生は、この特別措置法の一環であり、空き家を不動産市場に流通させるためにスタートしたものです。
空き家バンクを適切に運用できれば、売主にとっては空き家の活用に、買主は移住やビジネス拠点の確保につながるでしょう。
空き家の減少はもちろん、地方に移住する方の増加にともない、都市部に人口が一極集中している状況の打開も期待されます。

空き家バンクの運営元とは

空き家バンクは全国の市区町村、または市区町村から業務委託された団体が非営利を目的として運営しているサービスです。
2018年には全国を対象とした空き家バンクもスタートしており、全国各地に存在する空き家の情報を手軽に得られる状況です。
自治体ごとに運営している空き家バンクは地域による特色の違いを感じられる反面、運営方法などに地域差があります。

空き家バンクを利用した売却によるメリット・デメリット

空き家バンクを利用した売却によるメリット・デメリット

空き家を売却する方法として空き家バンクを利用することには、さまざまなメリットやデメリットがあります。

空き家バンクで売却するメリット①広く情報を発信できる

空き家バンクを利用して空き家を売却すると、物件情報を全国規模に発信できるため、買主の間口拡大に効果的です。
空き家バンクには、各自治体が運営しているものもありますが、全国版であれば北海道から沖縄まで買主を広く探せます。
空き家情報を閲覧する方自体が増えれば、購入を希望する方と出会いやすくなり、売買契約にいたる可能性も高まるでしょう。
少しでも早く空き家を売却したい方にとって、空き家バンクの利用は大きなメリットになると言えます。

空き家バンクで売却するメリット②料金負担なしで利用できる

空き家バンクは使用料がいらないため、料金を支払うことなく空き家情報を広められます。
そもそも空き家バンクは、非営利を目的として運営されており、運営元は収益を得るためにサービス使用料を徴収する必要がありません。
空き家バンクを利用して物件情報を登録し、浮いた費用を生活費やスキルアップに向けた資金などに充てることも可能です。
また、空き家バンクは物件情報の検索サービスも無料であるため、空き家を探している方にとっても、サービスを利用するメリットは大いにあります。

空き家バンクで売却するメリット③補助金を受給できる

空き家バンクでの売却におけるメリットとしては、補助金や助成金が受け取れる可能性がある点が挙げられます。
自治体のなかには、空き家バンクで見つけた空き家を実際に購入した方を対象に、リフォームや改修工事などに必要な費用を一部助成しているところがあります。
補助金・助成金制度があれば、初期費用の負担軽減につながり、空き家購入後のリフォームを検討している方も物件を購入しやすくなるでしょう。
なお、制度内容は自治体ごとに差があるため、補助金・助成金の受給は一概にメリットが大きいとはいいにくいです。

空き家バンクで売却するデメリット①トラブルが発生しやすい

空き家バンクを利用して物件を売却すると、買主と売主との間でトラブルが生じるおそれがあります。
空き家バンクの運営元が対応するのは、売主と買主のマッチングサービスの提供であり、売主と買主の仲介業務には携わりません。
もし、売却予定の空き家を空き家バンクに登録し、のちに購入を希望する方が現れた場合、売主は買主と直接交渉する必要があります。
また、不動産会社に仲介を依頼する売却方法とは異なり、空き家バンクを利用すると内見日の調整や準備などを売主自身が担当しなければなりません。
専門的な知識がないと手続きに不備が生じやすく、買主とやり取りを進めるうちに意見が対立するなどトラブルが発生する可能性が高いです。
少しでもリスクを抑え、安全安心に空き家の売却を済ませたい方は、空き家バンクを実際に利用するか一度検討したほうが良いでしょう。

空き家バンクで売却するデメリット②トラブルは自己解決が基本

空き家バンクに物件情報を登録したのちに買主との間で生じたトラブルは、当人同士が解決しなければなりません。
たとえば、交渉段階において売主と買主の条件がかみ合わずトラブルへと発展したとしても、運営元である自治体職員の対応は見込めないでしょう。
当事者同士でトラブルを解決できないと、場合によっては交渉決裂となり、売買契約を結ぶことはできなくなります。
トラブルへの対処に少しでも不安を感じる方には、空き家バンクの利用は敷居が高いといえるでしょう。

空き家バンクで物件を売却する流れ

空き家バンクで物件を売却する流れ

空き家バンクを利用して実際に物件を売却する流れは、まず利用条件の確認からスタートします。

売却の流れ①空き家バンクの利用条件を確認

空き家バンクを利用する場合の流れとして重要となるのが条件確認です。
条件の詳細は自治体ごとに違いがありますが、サービスを運営している自治体にあり、なおかつ建築基準法を遵守して建てられていることを条件とする自治体は多いです。
相続登記を正式に終えていること、不動産会社と媒介契約を結んでいないことも条件に含まれます。
また空き家バンクへの登録条件としては、市区町村長などから適切との判断を受けていることも挙げられます。
条件を満たしていることが確認できたら、次の流れへと進みましょう。

売却の流れ②必要書類の提出と現地調査

空き家バンクに物件情報を登録するには、「空き家バンク登録申込書」や「空き家バンク登録カード」などの書類を各自治体の担当課に提出する必要があります。
そのほか本人確認書類や空き家を所有する方の納税証明書なども準備することになるため、あらかじめ確認しましょう。
書類を提出すると、自治体職員による空き家の現地調査がおこなわれ、空き家バンクへの登録可否が判断されます。
提出書類の内容と現地調査の結果、審査を通過した場合は空き家バンクに物件情報が登録され、購入を希望する方が現れるのを待ちます。

売却の流れ③内見対応および売買契約の締結

空き家バンクに物件情報を登録後、購入を希望する方が見つかると自治体から連絡が入るため、該当する方と直接やり取りして内見の日取りを決めましょう。
当日は自治体の担当の方を含めて3名で内見を実施します。
内見を経て売買契約したい旨の報告を得た場合は、契約手続きを済ませて決済をおこないます。
手続きでは、空き家の売主と買主による直接交渉が必要になる点に注意しましょう。
売買契約書の作成および空き家の所有権移転登記は司法書士への依頼がおすすめです。

まとめ

空き家バンクとは、空き家の売主と物件の購入を希望する買主のマッチングを支援するシステムのことです。
全国を対象に買主を探せるメリットがある一方で、トラブルが生じやすいなどデメリットもあります。
空き家バンクを利用する場合は、条件の確認から始めて必要書類の準備、交渉の流れで進めましょう。