不動産売却の減価償却とは?計算方法や注意点を解説

事務員 S

筆者 事務員 S

不動産キャリア12年

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不動産売却の減価償却とは?計算方法や注意点を解説

不動産売却で利益が出ると、その金額に応じた税金がかかります。
その税金を計算する際に用いるのが、減価償却というものです。
土地や建物を売る行為は、日常的におこなうものではないため、どのようなものなのかお悩みになる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、減価償却とはなにか、計算方法や注意点について解説します。
土地や建物を売ろうとお考えの方は、ぜひ参考になさってください。

不動産売却における減価償却とは?

不動産売却における減価償却とは?

まずは、減価償却とはなにかについて解説します。

減価償却とは?

減価償却とは、経年劣化により資産の価値を徐々に減少させる会計処理のことです。
減価償却費とは、その処理によって算出された金額を指します。
たとえば、事業を行っている場合、業務で使用する機材や道具を購入することがあります。
購入時に一度に経費として計上するのではなく、徐々に計上することによって、税金の負担を分散させることが可能です。

減価償却の狙いとは?

不動産売却における減価償却は、事業で用いる場合とは少し異なる意味合いを持ちます。
前述のとおり、土地や建物を売却して利益が生じた場合、その金額に応じた税金が課されるでしょう。
利益は譲渡所得、税金は譲渡所得税と呼ばれます。
譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。
不動産売却で得た総収入(買主から支払われた金額)-(取得費+譲渡費用)
買主から支払われた金額がすべて利益になるわけではなく、取得費と譲渡費用を差し引く必要があります。
取得費とは、建物の建築費用や不動産取得税、売買契約書にかかる印紙税などです。
譲渡費用とは、土地や建物を売却する際にかかった費用のことで、仲介手数料や印紙税、建物の解体費用などが該当します。
ただし、建物の建築費用は取得費に含まれますが、売却時にはそのまま計上することはできません。
建物は築年数が経過することで資産価値が減少するためです。
減価償却費とは、資産価値が減少した分を経費として計上し、譲渡所得税を正しく算出するために使用されます。
なお、譲渡所得税は所有期間によって以下のように税率が異なります。

●所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%
●所有期間5年超え(長期譲渡所得):20.32%


所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得の税率が適用され、税金の負担が大きくなります。
土地や建物を売却する際は、減価償却費だけでなく、所有期間と税率の関係についても理解しておく必要があるでしょう。

土地は対象外?

土地は経年劣化しないものとみなされるため、減価償却は適用されません。
そのため、不動産売却後の税金を計算する際は、建物部分のみ減価償却をおこないます。

不動産売却で出てくる減価償却費の計算方法

不動産売却で出てくる減価償却費の計算方法

続いて、不動産売却で出てくる、減価償却費の計算方法について解説します。

どのような方法を用いる?

減価償却の計算方法には定額法と定率法の2つがありますが、不動産売却の場合は定額法を用いて計算しましょう。
定額法とは、取得費用を耐用年数で均等に割り、毎年同じ金額を償却する方法です。
平成28年4月1日以降に購入した不動産は、定額法のみが適用されます。
定額法の計算方法は、以下のとおりです。
建物部分の取得費×0.9×償却率×経過年数
少し複雑なので、いくつかのステップにわけて計算するのがおすすめです。

計算方法1:購入費用を調べる

まず、不動産の購入費用を調べます。
売買契約書や工事請負契約書などから、購入金額を確認してください。
前述のとおり、土地は減価償却の対象外となるため、建物部分のみを算出します。

計算方法2:償却率を確認する

建物の購入費用が把握できたら、次に償却率を確認しましょう。
償却率は、建物の建築方法や材質などによって異なります。
償却率は、以下のように定められています。

●木造:0.031
●鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造:0.015
●レンガ造・石造・ブロック造:0.018


木造一戸建てを売却する場合は、0.031を当てはめて計算します。

計算方法3:経過年数を当てはめる

最後に、経過年数を当てはめると減価償却費が算出することができます。
経過年数とは、不動産を購入してから売却するまでの期間です。
端数は、6か月以上の場合は1年とし、6か月未満の場合は切り捨てましょう。
たとえば、購入して20年3ヶ月後に売却する場合、経過年数は20年となります。

建物の購入費用がわからない場合は?

築年数が古い建物や相続で取得した実家などの場合、当時の売買契約書を紛失していることがあります。
取得費の領収書や請求書が見つからないこともあるでしょう。
そのような場合、概算取得費として売却価格の5%を計上します。
また、売買契約書や工事請負契約書がない場合、以下の方法で購入費用を調べることが可能です。

●標準建築単価から予想する
●固定資産税評価額から調べる
●消費税の金額から調べる


方法としてまず挙げられるのは、標準建築単価を用いて予想することです。
標準建築単価とは、国土交通省が公表している、1㎡あたりの工事費用の平均値です。
売却したい建物の築年数や構造、床面積から、どのくらいの費用がかかったかを調べることができます。
また、固定資産税評価額を基に調査することも可能です。
固定資産税は、土地と建物にそれぞれ課税される税金です。
土地評価額と建物評価額の比率から、建物の価格を把握することができます。
消費税の金額から調べる場合、売買契約書における消費税の記載の有無を確認します。
契約書のフォーマットや記載方法によっては、土地と建物の消費税が分かれていない場合もあるでしょう。
土地には消費税がかからないため、消費税の金額から建物のみの価格を調べることが可能です。
ただし、これらの方法は計算が少し複雑になるため、不動産会社に相談することをおすすめします。

不動産売却時によく出てくる減価償却費の注意点

不動産売却時によく出てくる減価償却費の注意点

最後に、不動産売却時によく出てくる減価償却費の注意点について解説します。

注意点1:概算取得費を用いると損をする可能性がある

注意点としてまず挙げられるのは、概算取得費を用いると損をする可能性があることです。
概算取得費とは、前述のように取得費が不明な場合に計上できるものです。
しかし、概算取得費よりも実際にかかった経費の方が多ければ、その分譲渡所得が高く計上されます。
譲渡所得が多ければ、その分譲渡所得税も増え、税金の負担が大きくなります。
損をしないためには、取得費がわかる書類をできる限り多く集めることが重要です。

注意点2:譲渡損失を事業所得や給与所得から損益通算できない

譲渡損失を、事業所得や給与所得から控除できないことも、注意点の一つです。
土地や建物を売って赤字になった場合、その損失はほかの譲渡所得から控除することができます。
しかし、控除しきれなかった損失は、事業所得や給与所得から損益通算することができません。
長期譲渡所得に該当する居住用不動産の場合、一定の条件を満たすと、売却した翌年に損益通算することが可能です。

まとめ

減価償却とは経年劣化によって資産の価値を、少しずつ減らしていく会計処理のことで、建物部分のみに適用されます。
定額法という方法を用いて、建物の購入費用や償却率、経過年数などを計算式に当てはめて算出します。
概算取得費を用いると損をする可能性があることや、ほかの所得と損益通算できないことなどが注意点です。