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賃貸物件の壁は原状回復義務がある?壁の穴やポスター跡などケース別に解説

事務員 S

筆者 事務員 S

不動産キャリア11年

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賃貸物件の壁は原状回復義務がある?壁の穴やポスター跡などケース別に解説

賃貸物件に入居した際は、壁に写真やポスターを飾りたいと考えている方も多いでしょう。
その際に注意したいのが「原状回復の範囲」です。
壁に穴を開けたり、傷をつけたりすると、退去時に高額な修繕費用を請求される可能性があります。
本記事では、賃貸物件の壁に関する原状回復の範囲について、ケース別に解説します。

賃貸物件の壁の原状回復義務①画鋲などで穴を開けた場合

賃貸物件の壁の原状回復義務①画鋲などで穴を開けた場合

賃貸契約を結ぶ際には「原状回復義務」について理解しておくことが大切です。
原状回復義務とは、借りていた物件を退去する際に、元の状態に戻す義務のことを指します。
「元の状態」とは入居時の状態そのものではありません。
具体的には、借主が故意や過失で物件に損害を与えた場合、その修繕が必要となります。

通常損耗の場合

普段の生活で自然に発生する損耗、たとえば床にできる小さな傷や壁紙の汚れなどは「通常損耗」と呼ばれ、原状回復義務の対象外です。
また、フローリングのきしみや設備の経年劣化についても、借主に修繕義務はありません。
通常損耗や経年劣化については、退去時に修繕を求められることはないため、安心して日常生活を送ることができます。

画鋲やピンの穴がある場合

カレンダーやポスターを壁に貼るために、画鋲やピンを使う方も多いでしょう。
では、その画鋲やピンの跡に原状回復義務が発生するのでしょうか。
国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、ポスターやカレンダーを画鋲で掲示する行為は、通常の生活範囲内とされています。
そのため、画鋲やピンによる小さな穴は通常損耗とみなされ、修繕費用を請求されることは少ないでしょう。
ただし、壁に多数の画鋲跡があったり、通常の生活では考えられないような大きな穴がある場合は、修繕費用を請求される可能性があります。
そのため、画鋲を使いたい場合は、あらかじめ管理会社や大家さんに確認を取っておくと安心です。

エアコン設置による壁の傷がある場合

近年、夏の暑さがますます厳しくなっており、エアコンは生活に欠かせない存在です。
そのため、物件にエアコンが設置されていない場合、多くの方が自分でエアコンを取り付けることになるでしょう。
エアコンを設置する際には、本体を安全に固定するために電動ドリルでビスを使用します。
このビスが原因で、壁に穴が開いたり、クロスや壁の下地が傷ついたりすることがあります。
では、エアコンを設置した際のビス穴に原状回復義務が発生するのでしょうか。
エアコンは生活に必要不可欠な家電であるため、設置によって生じる傷はやむを得ないものと判断されることが多く、原状回復義務が発生しない可能性が高いです。
しかし、賃貸契約の内容によっては、修繕費用を請求される場合もあるため、事前に契約内容を確認しておくことが重要です。
また、エアコンを設置する際には、室外機と室内機を繋ぐために壁に貫通穴が必要となります。
この貫通穴は、借主が勝手に開けることはできません。
貫通穴の原状回復には高額な費用がかかることがあるため、注意が必要です。
もし貫通穴がない場合は、事前に大家さんや管理会社に相談しましょう。

家具や家電による壁の穴の場合

住宅の壁や床は意外と衝撃に弱く、重い家具や家電をぶつけると簡単に大きな穴が開いてしまうことがあります。
とくに引っ越し時の家具の搬入や、模様替えの際に家具を移動させるときに、壁に穴を開けてしまうことは珍しくありません。
こうした家具や家電によってできた穴は、借主の過失や注意不足とみなされることが多く、修理費用を請求される可能性が高いです。
背の高い家具や角の尖ったテレビなどを移動する際は、とくに注意が必要です。
しっかりと対策を取って、大切な壁を守りましょう。

賃貸物件の壁の原状回復義務②電気ヤケ跡や変色した場合

賃貸物件の壁の原状回復義務②電気ヤケ跡や変色した場合

壁にできる穴と同様に、気になるのが壁についた跡や汚れです。
とくに壁は汚れやすいため、どこまでが原状回復の対象になるのか心配される方も多いでしょう。

ポスターなどによる日焼け跡は原状回復の対象外

カレンダーやポスターを壁に貼っていると、剥がしたときに跡が残ってしまうことがあります。
日光や蛍光灯による壁の日焼けが原因です。
国土交通省のガイドラインでは、壁紙の日焼けは通常の使用によるものとされています。
そのため、ポスターなどを剥がした際にできた日焼け跡については、通常、修繕費用は大家さんの負担となります。
したがって、借主が負担する必要はほとんどありません。

冷蔵庫裏の壁の黒ずみは?

退去時に冷蔵庫を移動させると、後ろの壁が黒ずんでいることに気づくことがあります。
「電気ヤケ」と呼ばれる現象で、家電のモーターから発生する熱によって壁紙が変色してしまうものです。
この黒ずみは、拭いても取れることはありません。
多くの方は、このような汚れに対して修繕費用を請求されるのではないかと心配されるかもしれません。
原状回復のガイドラインでは電気ヤケは原状回復の対象外とされています。
冷蔵庫だけでなく、テレビの裏でも同じように電気ヤケが起こることがありますが、この場合も修繕義務は大家さんにあることが一般的です。

家具は壁から少し離して設置するのがおすすめ

電気ヤケ自体は原状回復の対象外ですが、壁を完全に焦がしてしまった場合は、入居者が修繕費用を負担する可能性が高くなります。
通常、家電製品は壁から数cm離して設置するように説明書に記載されています。
もし説明書どおりに設置せずに壁を焦がしてしまった場合、それは通常の損耗とはみなされません。
そのため、家具や家電を設置するときは、壁から少し離して設置することが重要です。
壁と家具の間に隙間を作ると、通気性が保たれ、カビの発生を防ぐ効果も期待できます。

賃貸物件の壁の原状回復義務③タバコによる黄ばみやにおいの場合

賃貸物件の壁の原状回復義務③タバコによる黄ばみやにおいの場合

室内でタバコを吸うと、タバコのヤニで壁紙が黄ばんでしまいます。
さらに、タバコのにおいが壁に染み付いていることも少なくありません。

タバコによる汚れは特別損耗とみなされることが多い

原状回復義務が発生するかどうかは、通常の使用による「通常損耗」か、それを超える「特別損耗」かによって判断されます。
タバコにはタールという粘着性の成分が含まれており、その結果、壁や家具にヤニ汚れが付着します。
もしヤニ汚れが清掃で取り除けないほどひどくなっている場合は「特別損耗」として扱われることが多いです。
そのため、修繕費用は入居者が負担する可能性が高いでしょう。
さらに、エアコンにタバコのにおいが付着している場合は、エアコンのクリーニング費用も請求されることがあります。

壁紙の交換費用はどこまで入居者が負担するのか?

修繕費用を決める際に重要なのが「経年劣化」と「減価償却」です。
設備や建物は時間の経過とともに価値が下がるため、原状回復費用はその時点での「現在の価値」に基づいて計算されます。
つまり、大家さんが入居者に請求できるのは、経過年数によって減少した価値に対する修繕費用だけです。
壁紙の耐用年数は6年とされており、6年経過した壁紙の価値はほとんど残っていません。
したがって、6年以上住んでいる場合は、壁紙の張り替え費用が発生しても、それほど高額な費用を請求されることはないでしょう。
ただし、契約時に特約で喫煙に関する取り決めがある場合は、その契約書の内容がガイドラインよりも優先されるため、注意が必要です。

まとめ

賃貸物件の壁に画鋲跡などの小さな穴があっても、通常使用の範囲であれば原状回復義務はありません。
冷蔵庫の電気ヤケやポスターの日焼け跡についても、同様です。
一方、タバコによる黄ばみやにおいや特別損耗として原状回復義務の対象になる可能性が高いためご注意ください。